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【映画】☆4 予告犯

 

レビュー11本目は予告犯(2015)

評価:☆☆☆☆ 邦画も捨てたものじゃない

 

「シンブンシ」と呼ばれネットで犯罪予告と実況を繰り返す犯人とそれを追う捜査官との対決を描いた犯罪/刑事ドラマ

 

 

 

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『明日の予告を教えてやる』

インターネットで炎上した人間をターゲットに、犯行予告と制裁を加える様子を動画サイトで生配信する謎の人物。本日付の新聞に穴をあけカメラに語り掛けることからいつしか彼は「シンブンシ」と呼ばれるようになり、アングラな世界を中心に一躍有名な存在になり始めます。動画の過激さと、なにより「弱者の為に社会のゴミを制裁する」という彼の行動はまたたく間に一般人に受け入れられるようになり、次第に支持を集めていきます。そんな風潮に苛つきながらも、警察庁サイバー犯罪対策課は捜査に乗り出すのですが...

 

 

 

『お前みたいな屑には制裁が必要だ』

最近よくありがちな、社会の敵を制裁してスッキリ、という陳腐な復讐物語ではなく、全ての行動に意味があるというのがこの作品の面白いところです。犯人には「デスノート」の八神月のように野望があるわけでも、「善悪の屑」のカモのように強い憎しみがあるわけでもありません。言ってしまえばターゲットは誰でもよく、制裁はただ"ある目的"を達成するための課程に過ぎない。冒頭「勘違いするな、俺は自分の為にやってるわけじゃない」との宣言が入りますが、まさにその通りです。この手の作品はどんどん制裁相手を増やしてだらだら引き伸ばすきらいがありますが、「予告犯」は数巻であっさり完結します。拷問リンチといった残酷な手段を用いても彼らがしたかった事とは、そしてやり遂げたのち彼らはどう落とし前をつけるのか、それを捜査官とともに、視聴者は追っていくことになります。これが内容の全てです

何を漏らしてもネタバレになるので何も言えないのが残念ですが、「そんなことしたらバレるやろ、アホちゃう」という犯行でも、きちんと計算づくの上でのこと。あらゆるツッコミ/指摘を塩田剛三のようにあっさりとかわしてしまう、改めて「予告犯」の筆者は頭が良いと思います

 

 

 

古い時事ネタは犬も食わない

原作自体がネット炎上にフォーカスした作品なので仕方ないですが、比較的最近はやった事件を今見ると妙に古臭く感じるものです。焼肉の逆切れ会見やケンタのゴキブリ揚げなど、もはや時代を感じてしまうネタの数々。「TED」の吹替えで"くまモン"を使用したことで物議を醸した一件がありましたが、それも10年後20年後に見た時にどう受け止められるかが否定派の中心的な意見でした。歴史の曲がり角的な事件を時代背景の説明として挿入するのはいいと思いますが、ネットで炎上する程度、一過性のものを今見返すと賞味期限切れ感が否めないです

 

 

www.youtube.com震災からわずか1ヶ月後という恐怖 野々村にとって代わられましたね

 

 

 

それからこれはすべてのメディアに言えることなんですが、ツイッターや掲示板の投稿をなぜいちいち読み上げるのか。しかも演技臭いナレーションで。聴いててちょっと恥ずかしくなるのでそんなシーンは飛ばすか最低限にして欲しかったです。ここはマイナスポイント

 

 

 

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『あのさぁ!そっくりさん連れてこようよ!ねぇ!弱小じゃないんだからさ!』

おおむね満足していたキャストですが、一番期待し、目を輝かせて待っていた堀井社長が残念でした。この社長が契約社員をいじめるというシーンはこの漫画の知名度を上げるのにかなりの部分貢献したと思います。自分も「予告犯」という漫画をそれで知り、映画を観るに至っているわけです。そんなわけで今か今かと待ちわびていたわけですが、いざ現れたのはまさかの滝藤賢一。今時のIT会社らしく、オシャレにチリチリパーマをきめています。えぇ~... 

それでもかなり長い時間いびりシーンが確保されており、流れも原作通りだったのでまあよしとしますが... でもやっぱり小太り短髪で堀江●文に似てる社長に罵倒されたかったのは秘密です

 

 

 

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やっぱり戸田恵梨香の演技が微妙。対策課班長である吉野、一般大衆をひどく軽蔑する彼女の性格は、この映画だとただ悪態をつく嫌味な性格にしか受け取れません。原作だと事件解決のためならどんなことでもする冷徹さによって中和されていますが、なにぶん「女王の教室」の天海祐希のような切れ味や迫力がないため、無粋で空気が読めない失礼な女にしか見えないのがもったいないですね。頼れる先輩からヒステリック上司にジョブチェンジしちゃってます

 

 

 

そして誰も予想しなかった結末へ

配信先のインターネットカフェの特定や犯人の容貌割れなど、サイバー犯罪対策課は「シンブンシ」の正体に徐々に近づきつつありました。にもかかわらず制裁は放火や議員への殺害予告にまで規模が拡大、これには公安まで出動する大規模な捜査チームが組まれ、確保まで秒読みかと思われますが、実はそれも計算済み。「シンブンシ」は警察の力を逆に利用し、いよいよ計画の集大成として最後の予告を開始、ところがその内容は...

 

 

 

『人は誰かの為になるならどんなに小さなことでも人は動く』

名言になれそうでなれない名言、「シンブンシ」に協力し、拘留された人物の発言です。人を人とも思わない扱いをして文字通り血反吐吐くまでこき使う人間と、法に背いてまで己の信ずる正義を後押しする人間。悲しいかな、もちろんこの社会で成功するのは前者なんですよね。戸田恵梨香も「バカじゃないの」と一蹴。社会のレールから外れた/外された人間に待ち受ける結末は悲惨です。彼は少しでも「シンブンシ」に世直しをしてもらいたかったのでしょう。「シンブンシ」自身も過去に壮絶な体験を味わい、この計画をつくりあげました。それが現代と交互に描写され、明らかにされていきます。

不法入国者だろうが犯罪者だろうが、働いてくれればいい。ここはそういう所」

 

 

 

犯人が派遣や日雇いなど弱者側に立った人間というのもあって、陰鬱さ、未来のなさが終始漂っています。同じ生田斗真主演の「人間失格」では金もないのにいきなりキャバクラに行き始めてビビりましたが、今回は一瞬たりともきらびやかなシーンありません。食事は昭和の食堂で、移動はボロボロハイエース。そんな地味な絵面でも展開運びが絶妙で、最後まで満足して視聴できました

ただ一点、中盤の「シンブンシ」改め生田斗真戸田恵梨香の追いかけっこシーンが冗長だった感はあります。5分ぐらいそれといった展開なく延々と逃げ続けるので、生田斗真が息切れすると同時に視聴者も息切れしてきます。しつこい性格を表現したかったのかもしれませんが、このマラソン自体がくどいような...

それでもラストには必ず「そう来たか!」と驚かされることうけあい。警察も翻弄されますが視聴者も見事に翻弄されます。何も彼らの素性を知らない一般人からすれば「シンブンシ」の一連の犯行は憂さ晴らしにしか見えないですが、犯人の過去を把握する警察サイドからすればそれは別。真相を知ったあと必ずもう一度見たくなるでしょう!

タイトルに似合わず感動モノなのも高評価。個人的には漫画「罪と罰」と合わせて読むのをオススメしたいですね

 

 

 

ちなみに、原作ではところどころFalloutオマージュ?が含まれています。作者が好きなんでしょうか。作中、配信の舞台になる発信源はインターネットカフェですが、その名前が「ピット・ボーイ」。そして新発売される飲料の名前「レッド・クアンタム」。うーん偶然にしては出来過ぎな気が

 

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「ピット・ボーイ」のロゴがこちら、もうボルトボーイにしか見えないし、おそらく確定じゃないかと思います。映画版だと大人の事情で削除されていますが、こういうゲームネタ、しかも最近のゲームに関してはほとんど見ないので気付いた時嬉しいですね

 

 

 

以上、予想に反して面白かった。今度視聴予定の「進撃の巨人」との比較が楽しみです(白目) ついでに、同じ制作で11月公開の「ミュージアム」は、雨の日に現れるカエルマスクの怪人との対決モノらしいので、ちょっと気になってます。コンボ継続時間が増えるのかな? 被り物成分は大事だよ。微妙にビックリ系なので注意、URL貼っておきますね

 

wwws.warnerbros.co.jp