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【映画】☆4 父親たちの星条旗

 

 

 

「ここは特別な島だ グアムやサイパンとは違う

 日本にとって領土であり聖地 一万二千の日本兵が死守してる

 簡単には奪えんぞ」

 

 

 

レビュー24本目は父親たちの星条旗(2006)

評価:☆☆☆☆ 人は真偽を問わない

 

 

 

一枚の写真によって英雄に"仕立てあげられた"3人の兵士の成功と破滅を描く戦争映画

 

 

 

このメインテーマがなかったら凡作終わりだったろう

曲で映画の雰囲気がわかるのもいいよね 気が付くと口笛で吹いてたり

 

 

 

 

あらすじ1

予想以上に長引く戦争に疲弊し始めたアメリカ市民たち。既に国庫の戦争資金は底をついており、一刻も早い大日本帝国の打倒が政府内外から望まれるように。そこで彼らが狙いをつけたのは小笠原諸島南端に位置する硫黄島。手に入れれば本土を爆撃機の射程圏内にとらえることができる重要な島ですが、そこは日本固有の領土でもあり、激烈な抵抗は必至でした。それでも数で勝るアメリカ軍は少しずつ歩を進め、やがて島唯一の山であり島全体を見渡せる擂鉢山の奪取に成功。勝利の証として国旗が掲げられる瞬間は撮影され、"硫黄島の星条旗"としてまたたく間に有名になります

 

 

 

「私が知るものはみな あの戦場の話を嫌った」

もう十年も前の映画だっということに驚きを隠せない。硫黄島プロジェクトもうひとつの「硫黄島からの手紙」と比較すると地味です。これは誰が見ても同じことを言うでしょう。そりゃ、アメリカ人側からすれば荒涼とした砂漠のような臭い大地をひたすら行軍し、たまにどこからともなく這い出てくる日本兵に撃ち殺されるという、あまりにクソゲー過ぎる作戦ですもんね

本作は実在の人物にスポットを当てた、ドキュメンタリー風な構成になっています。タイトルから推測できるとおり、子供が老年の父親にインタビューをしているという体です

程度の差はあれど彼らはみな戦争に病んでいる様子がみうけられます。カメラのフラッシュや花火、ちょっとした刺激でフラッシュバックが起こり、現代(とはいえ戦時中)と硫黄島で戦った過去を交互に描写され、「硫黄島の戦い」が兵士たちにとってどうだったかが浮き彫りになっていきます

 

 

 

あらすじ2

人々の頭に浮かんだのは、「写真の人物は誰か?」という疑問。名乗りを上げたのは、生きのこった3人の若き兵士たち。帰国するやいなや、国の英雄として大歓迎を受けます。あまりに話が大きく有名になり過ぎて、そこにある嘘を今更言いだせなくなった彼らは、やがて苦難に苛まれるようになっていくのでした

 

 

 

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3人のうちこの作品の主人公は誰かといわれれば、それはインディアンの血を引く青年アイラでしょう。「プライベート・アイラ」として公開しても違和感ないです

彼をとりまく環境と生涯を追えば、20世紀後半になっても根強い先住民差別がアメリカに残っていたことがよくわかります。あのワシントン大行進が1960年代のことですから改善がなされたのはそれよりさらに後、いかにアメリカに於いて有色人種、というよりWASP以外の者が迫害を受けてきたかがわかります。そもそもフロンティアという概念から避けて通れない先住民問題に直面して、アメリカ人はジェノサイドを選択しています。黒人を奴隷階級として吸収したのに対し、こちらは全面戦争。スー族の顛末を見るに、目指したのは文字通り根絶やしです。一度は剣をたがえた相手に寛容になれるはずもなく...。「インディアンに出す酒はない」とか「インディアンめ」とか、国の英雄でもその扱いはひどいものです。こいつら同じ人間か!って、そもそも人間扱いしてないからノープロブレムなのよね

 

 

 

ネタバレになりますが、戦地から名誉の凱旋を遂げた彼は酒に浸るようになります。実はこれ、クズなアイラがただのアル中になったわけではなく、インディアンと酒には深いかかわりがあるんです。というのもインディアンには酒造の文化がなく酒に不慣れで、よく無理な飲酒で問題を起こしていたとか。こういう細かい史実設定をふんだんに盛り込まれると、こちらとしても高評価を付けざるを得ません。特に説明もなくさらっと流される細かいシーンに魂が宿っています。勉強になりますねー

日系人なんかは太平洋戦争中、もれなく事実上の強制収容所に送られていますしね。トランプ大統領の過激とも言われる対外政策は、アメリカ史を見るにさほど驚くべきことでもないのかもしれません。というより、黒人系のオバマが大統領になれちゃったことの方が凄い。平和賞も貰ったのもそれほどおかしくはないのかも

 

 

 

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こいつらいつも国債宣伝してるな。日本からすればアメリカ=ゴリ押しというイメージがありますが、その物量を維持するのも一苦労だったようです。ここ硫黄島の戦いにおいても弾薬節約の為準備砲撃がぜんぜん出来ていません。ガバガバ作戦と誤爆はアメリカの華なのか...?

このお涙頂戴の国債集めショーラッシュはどこかで見たような気がします。未亡人が夫を亡くした話をずっとする映画でした。思い出せない...

 

 

 

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発注ミス

 

 

一応戦争映画なので、戦闘シーンについて。迎え撃つ日本軍兵士の描写は少ないですが、鬼気迫るものがあります。上陸してくる米兵に向け、枯れ草で覆ったトーチカから、はたまた砂で隠した落とし戸からニューッと銃砲が出てくるシーンは映画「プレデター」を思い出しますねえ。大きな抵抗もなく悠々と上陸できて余裕に浸りきっている米兵に不意打ちが成功する瞬間は待ってましたといわんばかりです。もう一方の「硫黄島からの手紙」を見ていると、栗林中将の作戦がいかに優れていたか、米軍にとって嫌なものであったかがよくわかります。夜戦、待ち伏せ、トラップ、なんでもありのデスマッチです。「プライベート・ライアン」のように正面からあたろうとする部下の意見を無視した結果の大成功です。柔よく剛を制す...ちょっと違うか

日本軍が感情のないキルマシーンのようにしか映らなかったのがちょっとだけ残念だったかも。それでも赤ん坊爆弾や食人描写よりはマシでしょう。日米共同制作じゃなかったら幕を張ったホンジンからクリバヤシがニポッントウで指揮していたに違いない。米兵から見れば日本兵はこんな感じだったんでしょうね

最近イオージマ級の軍用艦がニュースに出てきました。確かオスプレイ関連だったと思います。ものっごい死者出した場所の名前を借りるその精神がわかりかねますが、それほどアメリカ軍にとって思いが深い土地なのでしょう。それよりもよくもまあヘリコプターにアパッチなんて名前を付けられたものですね 冏rz

 

 

 

「英雄とは人が必要にかられて作るものだ」

温まりやすく冷めやすい陸のような大衆。国に帰っても駐車場係にもなれやしない...ことはなさそうですが、偶然取られたたった1枚の写真をきっかけに全てが流転してしまう様は見どころ。話題にならなくなったら捨てられるのはいつの時代も同じ。映画が終わったあと、ボーっとエンドロールを眺めてしまうような虚脱感をどうぞ。オススメ!