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人生®

ゲーム、映画、ゲーム

【映画】☆4 ドラゴン・タトゥーの女

映画

 

気が付けば2週間も放置してしまう。そろそろ記事のストックがパンクしそうです

 

 

 

「誰かが彼女を殺したのだ あの日島にいた誰かが」

 

レビュー18本目はドラゴン・タトゥーの女(2011)

評価:☆☆☆☆ 人間はつめたい

 

ドラゴンの刺青が目印、凄腕ハッカーのスレンダー女が巨大組織を相手取り、マグナム片手に真実を暴き出す痛快アクション映画!

 

 

 

だと思ってたんですよ。トゥームレイダー」や「ドゥームズデイ」的な、屈強なゴリラ女が大暴れして解決!って感じで。タイトルもパッケージもタフな女性主人公をにおわせる感じでしたしね。ところがどっこい、実際はレイプ拷問ベッドシーンの3種がふんだんにもりこまれて、別の意味で痛快なので気を付けて。特にベッドシーンはモザイクがかかるレベルの濃厚さで辟易。これでR15ってどういうことなの...。一応性暴力が1つのテーマになっている作品群なので、描写がやはり多くなります。なんなら3種が同時に出てくるシーンがありますからね。一人で見ましょう

 

 

 

すっぱ抜き記事の裁判で敗訴し落ちぶれた記者・ミカエルと、合法非合法を問わない若き凄腕クラッカー・リズベットの2人が、40年前に起こり迷宮入りした巨大一族の娘失踪事件を追うサスペンス/ミステリー映画

 

 

 

 「あの後すべてが変わった。一族も会社も」

いきなり趣味の悪いミュージックビデオが始まり、これが全くアクション映画でないことを早々に理解します。大企業の武器密輸をすっぱぬいた雑誌「ミレニアム」。しかしそれには決定的な証拠が足りずに提訴を受け、結果は敗北。出版会社の名誉は地に堕ち、発行責任者であるミカエルは家の財産までも奪われてしまいます。クリスマスとは言えど全く楽しめないそんな彼のもとに、「あなたに会いたい」と1本の電話が。聞けば、依頼主は有名なスウェーデンの実業家で、調査対象は40年前に起こった少女の失踪事件

ごたついた時期に入った、それも到底解決できそうにない依頼を1度は断るも、依頼主から約束されたのは莫大な報酬金と、何より欲しかった判決を覆せる証拠。抱えた負債、失った名誉。世のごたごたからも逃げられる一石三鳥の依頼に、ミカエルは首を縦に振らざるを得ないのでした

 

 

 

作品全体を通して漂う、薄い氷の上をつま先立ちで歩くような緊張感。首を突っ込んではいけないところに突っ込んでいく、ヒリヒリを肌を焦がすような張りつめた空気が心地よいです。常に心臓ドキドキ の閉鎖空間は「ビレッジ(2004)」や「シークレット ウィンドウ(2004)」に似た感じです。行くなよ絶対行くなよの方向に猛進するのはこういう作品の宿命なんでしょうか。スウェーデンの気候も雰囲気づく りに一役買っています。島まるまる1つの上に建てられた大きな豪邸、橋を渡って来る訪問者は一族関係者のほかにはおらず、ミカエルが執筆の間住まうことに なるコテージもひどくさみしい場所です。いくら外見がきらびやかとはいえ、陰鬱な事件の舞台になった豪邸。横溝正史スウェーデン人だったらこんな館が殺人の 舞台になるでしょう。一面寒色の内装にまばらな家具、天気は雪、曇り、雪、見ているこっちまで寒くなってきますね。スコッチをそれはうまそうにグビグビ やってます

 

 

 

「彼女は普通とは違う」「どんな点が?」「...すべてが」

ちょうど同じころ、ある少女がミカエルの周辺をこそこそと嗅ぎまわり始めます。彼女こそがリズベット、ドラゴンタトゥーの女です。何を隠そう彼女は依頼主の実業家から頼まれ、彼が失踪事件調査を依頼するに足る人物かを調べる役目なのでした。実際彼女の調査は完璧で、人柄から不倫相手への"クンニ"の時間まで調べ上げてしまい依頼主はドン引き

それほどにまで卓越したスキルを持ったリズベットですが、生まれ育った環境のせいで、医師をして"異常者"言わしめる凶暴な人物。たびたび暴力事件を起こす厄介者として扱われていました。そんな彼女の面倒を唯一見てくれるのは、後見人の老人。彼は身寄りのない若者たちの保護活動を続ける人格者でした。ところが彼が脳出血で倒れてから事態は一変、新しく就いた後見人は、援助と引き換えにリズベットに様々なことを要求するようになります

 

 

 

 「動くなよ 初めて使うんだ」

変態役の男性が非常に変態でよい。ここまで気持ち悪い男性を演じられるのはすごい。これを初めて思ったのは記憶の限りではドラマGTO(1998年版)の勅使河原先生だった気がします。この映画、リズベットの外見と性格が特徴的過ぎてそのほかの人物がその陰にかすみがちですが、この新後見人の弁護士だけは非常に強烈なインパクトです。サスペンスものの宿命ですが、犯人を特定させないためにポッと出の1話限りの新キャラをどんどん出していって、結果誰が誰だかわからなくなるというのがあります。特に外人顔横文字の名前ならなおさら。ですが彼だけは強烈な個性で作品にアクセントをつけています。「ドラゴン・タトゥーの女」を見せて、印象に残った人物を聞いたら彼はトップに入るんじゃないでしょうか

 

 

 

 

精神科医からして異常者言わしめる。ピアスに白眉に非常にエモい外見の彼女ですが、よくできた子とは言いませんが一応理性ある大人です。劇中ではそこまで詳しくは語られませんが、父親を半殺しにしたり。ただ、一度彼女をキレさせるとその攻撃性は爆発、ヤバいことになります。ただ拷問シーン自体はぶっちゃけ物足りない感はあります。もっとこう「オーディション」のようなキツいものを今か今かと待っていたので、少し落差がありました。あそこまでやってしまうと映画のジャンル自体がもう変わってしまうのでしょうがないですね

 

 

 

 「女を殺した奴を捕まえる 手伝ってほしい」

調査を進めるにつれて手掛かりを少しづつ集めていくミカエル。しかし、足りないのはそれを裏付ける証拠。証拠がなければ手掛かりをいくら集めても意味がない、ミカエルはそれを、敗訴によって痛いほどよく理解しています。彼には優秀な助手が必要でした。そこで依頼主から紹介されたのは、かつてミカエルの身辺調査を行った若き天才クラッカー、リズベット。後見人の問題を"解決"したリズベットは、アパートを訪ねてきたミカエルの条件をのみ、調査へ参加。こうして彼らは二人三脚で、40年前の未解決事件を追っていくことになるのですが...

 

 

 

液晶画面を意味なく並べたり、いきなり「いけそうだ」とか言って高速キーボードぱちぱちを始めたり、萎えるハッカー描写ばかりのこの世の中。セキュリティホール今から探すんですか? 大体「天才ハッカー」と銘打たれる人物が出てくるたびに苦々しい気分に打ちひしがれていましたが、今作ではそのようなテンプレ描写がなく好印象。淡々と侵入し、淡々と諜報装置を仕掛け、淡々と情報を収集する。常に不言実行事後報告の彼女の仕事ぶりはまさに天才といっていいでしょう。ミカエルの方は普通ですが、お互いマックブック1本での仕事ぶりはステキです

 

 

 

結末ははっきり言って微妙です。どんでん返しでもなければ簡単に予想できるものでもない。まあ登場人物がほとんど引きこもりなので(スウェーデンの気候なら仕方ない)必然的に記者とのかかわり合いが少なくなり、誰が犯人であってもイマイチ何も感じない点はあります。そこらへんが調査の緊張感そして壮大さと釣り合っていないように感じました。純粋な推理ものには、映画だとあまりに尺が足りなさすぎるので期待しない方がいいです。考えてるうちに話が進み、拷問シーンですべて忘れます。そこは原作で補完し、映像ならではの緊張感を楽しむ分にはとてもおすすめしたいです。それでも一応2時間30分あるんですけどね

 

 

 

例によってバッド/ハッピーではなく、報われるか報われないかといえば、報われないです。あんまりにあっさりな終わり方で完全に不完全燃焼でした。二人して難事件を追いかけるうち芽生えかけた何か、壮絶な過去や歪んだ愛を乗り越えて生まれかけた何かが現実を前にしぼんでいく。最後に映る、雪散る真っ黒な冬空は現実の非情さを表しているようにも思えます

あのままではちょっと切なすぎるので、ぜひ続編を作ってほしい。原作「ミレニアム」シリーズにはまだストックがありますし、商業的に十分成功していますしね。ぜひとも次回作、ミカエルとリズベットの新たなスクリーンでの活躍に期待したいところです。そのときは絶対観に行きます。一人で

 

 

 

 

 まとめ: ナチが悪い

 

 

 

2016/12/04 校正