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ゲーム、映画、ゲーム

【映画】☆4 運命を分けたザイル

 

 

 

「よく思ったものだ

 もし何かが起こったら 重圧の中で祈るだろうか

 "マリア様 僕をお救いください"と」

 

 

 

ドキュメントにはまってしまいました。自分の中でプチブームです

評価:☆☆☆☆ 底知れぬ恐怖

 

 

 

感動の実話を映画化! といった感じのコピーが銘打たれていましたがそんなことはなく、実際は過酷な状況下での地獄のような体験を映画化したものになります。リポビタンDじゃないですが、ファイトー 一ッ発! 鷲のマークの大正製薬的展開を予想していた視聴者を待っているのは、「あの時関節が外れて足の骨がずれちゃったんだよね」とあまり知りたくない怪我の詳細をジェスチャーでわかりやすく説明する(本人)インタビュー、再現ドラマの俳優は這いつくばり、移動するたびに「アアッ」と痛そうにうめき、泥水をすすり、雪を食い、幻聴に悩まされ、尿を垂れ流してその暖かさに感動します。これ詐欺...詐欺じゃない?

 

 

 

まあ何はともあれ評価すべきは、ドキュメンタリー中の再現ドラマとは思えないほど神がかった俳優の演技でしょう。それからメイクもすごい。凍傷で黒くなった指まで完全再現。日焼けと寒風にさらされて真っ赤に焼けた肌も、よくみる登山家のハンディカメラに映るそのままです。不飲不食でしばしばする目から(這いずることのできない)岩場で痛そうに足を引きずる様子まで、すべてが痛そうで本気で心配します。ここはぜひ吹替えではなく字幕で見てほしいところ。そういえば、真っ赤になった彼の顔を見て真っ先に思いだしたのはK-19でした

 

 

 

つづいて山を題材にした映画で欠かせないのが大自然の描写ですが、これは満点に近い出来でしょう。クレバス内の描写が凄すぎて圧巻です。「剣岳 点の記」や「八甲田山 死の行進」で感じた、「どうやって撮ってんだこれ...」という驚きをさらに塗り替える作品だと思います。何十メートルという厚さの氷とそこに積もった何層もの雪。なんとなく「入ったらすぐ低温症ですぐ死ぬ」というイメージしかなくとも、そこが死の世界であることはわかります。「トランスフォーマー」ではただのツルツルした氷穴って感じでしたがえらい違いです

とりわけ、底についてやっと一安心したかと思ったら、ミシミシと崩れる音が聞こえてくるシーン。そこはクレバスの隙間に溜まった雪隗の上にほかならず、下は中空でまだまだ底がある...。思わずぞっとする最高のシーンでした。自然の恐ろしさを体感しましたね。ここまで「クレバス」単体を描いた作品はなかなかないと思いますよ。薄氷を踏むってのはいい例えですよね

 

 

 

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それから音響もピカイチです。新雪を踏んだ時の「ギュギュギュッ」という音や、ツララが折れるときの「パキイン」という音、苦しそうな吐息とその残響まで鮮明に聞こえ、臨場感がまるで違います。ここは最近の映画ならではの楽しみ方でしょう。ドキュメンタリーなんてテレビでやってるので十分、わざわざ金を払って見るまでもないという人は多くいるでしょうが(自分もそうですが)、この音響を体感したらもうあの安っぽい吹替えドラマは見られないと思います。見てるだけでも寒くなってきます。ここだけの話、2回トイレに行きました

 

 

 

欲を言えば前半部分でもっとアルピニストという職業?内容の説明に時間を割いて欲しかったと思います。宙吊りになって寝たり、パートナーに命を預ける登り方だったり、面白い話がたくさんありますよね。、そもそも1g単位で持ち物を厳選する彼らの登山法が、なぜ泥水や雪を飲食する羽目になったのかの前提になっているところでもあります。自分は予習済みだったのでいいですが、普通だったら「いやテント貼れよ」というツッコミをしてしまうところですよね。本人をインタビューに呼んでいて、「感動の実話を映画化」した大衆向けの映画なんだから、もうすこしその専門性特殊性について面白い話を聞かせてもらえたら満足度も高まったかもしれません

 

 

 

冬山、といってもスケールの違いすぎる過酷な冬山ですけれども、卓越したプロにもこんなことは起こりうるという教訓的作品として楽しめるという感想です。結末は...伏せておきますね。「運命を分けたザイル」、テキトーになりがちな映画のタイトルとしては珍しく、なかなか考えさせられる唸らせるものだと思います。ちなみにザイルとは登山用のロープのことを指します

ちなみに冒頭で引用したセリフですが、「答えはいつもノーだ。神などいないのだ。人は死んだらそれきりで、神など存在しない」と続きます。極限の状況に置かれた人間、特に小児のころから教会に通い詰めだった人間が頼るのはやっぱり神だと思っていましたが、実に現実主義的で意外ですね。頼れるのは自分の身一つという、極限の世界で生きるアルピニスト特有の考えが、あの結末につながったのかもしれません

冬山の話題、山岳事故の話題が出た時には是非とも推薦したい1本です。春が来る前にぜひ見てほしい。オススメ!

 

 

 

 

 

 

 

 

【映画】☆3 アサシンクリード

 

 

 

「暴力はガンと同じ病気よ

 そしてガンと同じように治療できる」(うろ覚え)

 

 

 

いつの間にか20000PV突破してました。ワーイ

レビュー26本目はアサシンクリード(2017)

評価:☆☆☆ いつものUBI

ほんの少しネタバレ 怒りの4000字

 

 

 

観に行く人なんてそうそういないだろうと舐めた考え、近所の映画館でいいやと思って予約も何もしなかったところ、時すでに遅し、2時間前にはすべて席が埋まってしまいました。宣伝に十分金をかけるとやっぱり人の入りからして違いますね。公開日から初めての休日なのを甘く見ていました。仕方なく実に数年ぶりに新宿ピカデリーまで遠出。バスから無限にスポーンするキャリーケース装備の中国人の間を縫い、社会への不満を爆音で訴える怖い人たちをかき分け目的地へ

記録的な暑さと休日の混雑で死ぬかと思いましたが、上映回数ととキャパシティーの多さで空きが十二分にありました。しかしそれでも、朝には空きありだったのがあれよあれよという間に埋まり、1時間前には先頭列以外はすべて埋まってしまっていました。ピカデリー内も人人人。そんなにみんなして手すりにもたれ掛かったら崩れるんじゃないかと余計な心配をしながらもとりあえずチケットを確保

 

 

 

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ゴジラ通りもこんな感じに。たてながの壁面広告がToHoシネマズの壁にドーン

しかし歌舞伎町ではパルクールはしたくないですね... 汚な過ぎる

 

 

 

あらすじ

幼少期、偶然父親が母を殺害するのを見てしまったカラム。その時はわけもわからず逃げ出すも、そのころからずっと、実の母を殺害した父を憎むようになっていきます

時は流れて30年、殺人の罪で獄中にあった彼に薬物投与による死刑が執行されます。しかしなぜか彼は生きながらえており、目覚めたのはアサシンの末裔たちを軟禁する巨大な施設。「外に出してくれ」と懇願する彼に持ちかけられた条件は、”アニムス”と呼ばれる装置を使い、500年前の先祖であるアギラールの記憶を追体験すること、そして今は失われし秘宝"エデンの果実"のありかを突き止めることでした。こうして、身体的精神的な負担を伴う危険な実験に、半ば無理やりに参加させられる彼でしたが...

 

 

 

 

 

感想としては残念と言わざるを得ないです

ちなみに自分はPSPでアサクリシリーズが出たあたりからあまり追えていないので、ゲーマーとしての評価は参考にしないでください

 

 

 

アクションについて

期待していたパルクールアクションはちょっと物足りない。役者の後ろに密着して見せてくれればいいものの、上から下からカメラをぐるんぐるん回すので身のこなしが認識しづらい。映画的な見せ方にまったくそぐわないのは理解していますが、できればこんな感じでねっとり映してほしかったところ

 

 

 

 

 

 

しかし敵との戦闘は原作を大事にしつつ、映画的なカットもふんだんに盛り込まれていて大満足!

特に中盤、やっと人一人通れる狭い通路で両側からやってくる敵に対し、背後の敵には弓を引く手で肘鉄、その流れで正面の敵に矢を浴びせるシーン。それからイスラム調の寺院/宮殿での室内戦で、闘いが終わったあと水路が真っ赤に染まっているカット。建設中の木組みの足場を上ってのイーグルダイブや通りに渡された洗濯ひもを器用に踏んでのアクロバット空中散歩など、単に中世に舞台を置いただけではなく、そこにあるものあったものをうまく使っている。馬車に貼り付く敵を引きはがしたり、人を押しのけてゆっくり処刑台に近づいていくところなんかは「あーやるやる」と顔がほころびました。途中から全くアサシンしなくなり、無双シリーズへと移行していくまで同じ

「アサクリ」シリーズが売れたのはそこにあるものを利用して暗殺や逃走を行うことが1つあるでしょうが、映画でも完全再現で最高だったと思います

 

 

 

つづいてストーリー

非常にわかりやすい悪役。しかし訳の問題ではなく知識の問題として、未プレイ者には「騎士団」と「教団」を非常に混同しやすいです。ちなみ騎士団は「テンプル騎士団」でいわゆる悪役、教団は「アサシン教団」で思想弾圧に反抗する正義の集団となっています。教団っていわれたらやっぱり邪悪な方を思い浮かべてしまい、これ見よがしに悪そうなポープの登場と相まって最初は非常に混乱すると思います。ここだけは予習しておきましょう

15世紀中世編は観客の期待する「アサシンクリード」だったと思います。魔女裁判の異様な様子やスペイン歴史市街は見ているだけでも十分楽しかったです

 

 

 が、

 

 

それらをすべて台無しにする現代編 冏rz

誰もが同じ評価でしたが、現代編は本当にムダでした。自信をもってクソと言えます

中世編と異なって、完全に映画化失敗です。そもそも大掛かりなアニムス装置自体薄ら寒い。普通にベッドに横たわっておくすり注入では駄目だったのか。展示品で戦い始めるシュールな光景や、号泣して歌いながら機械に吸い込まれていく主人公など、悪い冗談かと思いましたね。主人公が収容される施設もやたら近代的でオシャレ、SFかと。あまりに改変フィクションが過ぎ、観客置いてきぼりです

 

 

 

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なんだこれ...

 

 

 

それから最後まで主人公が何をしたいのかわからない。立ち位置的にはデズモンドでしょうが、アサシン教団の教義に感銘したわけでもなく、かといって強要や説得に遭ったわけでもない。父親との確執も煮え切らない会話のうちに終わり、なぜ彼が退行に前向きになるのが全く理解不能です。彼を取り巻くグループは大きく分けて2つあり、囚人(とはちょっと違いますが)であるアサシン教団の末裔たち、そして彼らを管理する騎士団たちですが、彼らとの対話が抽象的過ぎて終始ポカン状態。皮肉の言い合いがしたいのか、単にカッコよく意味深なことを言いたいだけなのかわかりませんが、マジで何言ってるかわからな過ぎて笑えて来ます。意味のない会話が延々続きストレスフル。と思ったらいきなり衝突が起こったり、裏切りが起こったりと置いてきぼりのまま話が進んでいってもうわけわかめ。現代編に戻るたび「早く終われ」と神仏に念じていました。ここで腹が立って☆4から☆3に降格

 

 

 

それでも退席せず見続けるオーディエンスを最後に待ち受けるのが「後編につづく...」といわんばかりのぶつ切りエンド。1時間30分を過ぎたあたりから、「ここまで広げた風呂敷をどう畳むのだろう」といぶかしみ始めましたが、普通に丸投げされて終わりました。ええ。心の中でアサシンブレードがシャキーンと飛び出しましたよ。この尻切れトンボ感、SFチックな収容施設、キャストの構成、意味ありげそうに見えてまったく成り立っていない会話、題材を台無しにする荒唐無稽さ、そう、これは「メイズランナー」だ!

がっかりです。中世編だけで構成しておけばよかったのに、どうしてこんなことになってしまったのか。アムニスを使ってこの記憶を破壊できないものか。悪いことは言いませんが、2000円の価値はないです。全くオススメしません

 

 

 

その他

・ポリコレの波もろかぶり。舞台がスペインなんだから全員白人でもいいじゃない。そもそもアサシンの末裔たちという設定の人物がアジア人黒人なのはいかがなものか。受ける継がれる「血」がテーマなのにそもそも人種が変わっているのはいいのか。ラストで黒人白人アジア人ときれいに並ぶのを見た時はなんだかなーと思いました

・タカのシーン使いすぎ。そして一つ一つが長い。ダイナミックな動きで作った地形を見せたいのはわかりますが、もはや濫用といっていいレベルの挿入

・アサシンブレードが出る音がでかすぎて心臓が止まる

 

 

 

客層

客は想像通り、7-8割が「ゲームは予習済みだぜ!」といわんばかりの男子高校生中学生といったところ。土地柄なのか、外国人の方がちらほらいたのには驚きました。字幕版だったのも大きいでしょう。吹替え版の声優が斎藤工だということを今知って若干の後悔を覚えています

前々からなぜ「アサシンズクリード」に翻訳しなかったのかいつも疑問に思うんですよね。せっかくそのまま外来語で通すのなら'Sまで行けばよかったのに。「クローズアップ現代」と同じもやもや。とうとう映画のタイトルにまでなってしまいましたから、多分このまま「アサシンクリード」で行くんでしょう

 

 

 

ということで以上。ゲームの映画化で(個人的に)トンデモというと「バイオハザード」、歴史の映画化でトンデモというと「300(スリーハンドレッド)」が思い浮かび、それが合わさった魔界料理が出てくるかと戦々恐々としていたところ、そこまで悪くはなかったです。映画館の大画面にUBIのロゴが表示されたときは興奮しましたし、現代編に戻るまではウキウキでした。続編はまず出るでしょうがタダでも観に行きません。金を貰えるなら行きます。名前につられて入ってみたら思ったのとは全然違ったロボットレストラン的な作品。トレーラーだけよくできてるいつものUBIです。全体的に説明不足で展開が急。原作だと光るものも多かった音楽もいまいち。ゲームの映画化なんて観に行くものじゃない、改めて痛感しました 冏rz

 

 

 

 

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 03/08/2017 URL抜けを修正