【映画】☆6 リアルスティール
記念すべき10本目はリアル・スティール(2011)
評価: ☆☆☆☆☆☆ 墓に入れて下さい
ロボットボクシングでの勝利と、それを通じて育まれる親子の絆とを並行して描いた近未来SFアクション
☆が5個じゃ足りないので6。人生映画10選を作ったら必ず入るでしょう!
最悪な出会い
ロボットボクシングの人気に押されて人間のボクシングが行われなくなった時代。元プロボクサーである主人公チャーリーは操縦者として各地を転々とするも、いつも試合に負けロボットをスクラップにする日々。金を失うと書いて鉄、ロボットファイトには金がかかります。彼は家も持たず大型トレーラーに住み、膨らんだ借金の取り立てをトンズラしてまわるろくでもない生活をずっと続けていました。ところがある日通達で、かつての妻が死に、裁判所が残された幼い息子の扶養者を探していることを知ります。金に困っていた主人公、引き取り手は州法で彼となっていることをいいことに、もう一方の候補である裕福な妻の姉夫婦にある取引をもちかけるのでした
「金と引き換えに、養育権を買わないか」
拳、懸賞金、鉄
主軸に置かれるロボット戦士はもう最高の一言。形と戦略が完全にマッチしていて、「自分はこれが好き」といえるぐらい個性的なロボットたちが大活躍! 例えば野良試合の相手ならスクラップを集めたいびつで左右非対称のロボ、酒場だったら保安官風のロボというふう、おのおの主張が激しいです
驚くなかれ、メイキング映像で作品について語る満面の笑みのスタッフの後ろにはロボットが並んでいますが、なんとこれまさかの実寸大の精密モデル。1/1モデルを作ってからCGで作画したスタッフの狂気が計り知れます
もちろん試合も迫力満天。金属と金属がぶつかり合う、「ゴキャン」という音が気持ちいいですね。作中で、「人は派手さ、過激さを求め続け、ロボットボクシングにたどり着いた。人間のボクシングは時代遅れになった」みたいな言及がなされていましたが、よくわかります。火花を見ると興奮するのはヒトの性なのだ
なぜ誰もロボットの左腕を丸ごとハンマーに変えることを試さなかった?
無限のパワーのぶつかり合いは凄まじく、胴体から真っ二つになってビクンビクン跳ねたり、頭ごと回線千切られて大量の液体を床にまき散らしたり、「こんなのボクシングじゃねーよ」と言う主人公につい同調してしまいます。一方的展開ともなれば観客もヒートアップ、両手にサムズダウンで「ぶっ壊せ」連呼。 KO≒大破の過激なスポーツです。地上波で放映してええんか...
ちょっと話題がそれますが、実際のロボットデスマッチを見る限り、実現は今世紀中には無理かも。我が国としては一歩先を越された感じがしますが、米番組Robot Warsは一見の価値があります。体の10割が顎という冗談のようなフォルムのRazerは特にお気に入り。これが強いんです
成長
「ひと夏の間だけ思い出を作り、あとは息子の幸せを思って泣く泣く引き渡す」という建前で、金と引き換えに養育権を手放した主人公。やってきた子供は彼とは真反対の強気な性格で、なかば脅迫じみた説得でトレーラーに乗りこみロボットボクシングに随伴。当然父親の後先考えない向こう見ずな挑戦にはがっかり、試合には負け、子供を売った金で買った歴戦のロボット「ノイジー・ボーイ」もめでたく行動不能に。新たなロボを買うあてもなく、使える部品を集めるため忍び込んだスクラップヤード。そこでかれらは思いもしない出会いをすることになります。雨にぬれほとんど土に埋まったそれは、のちに「人々のヒーロー」とも呼ばれるようになる旧型ロボットなのでした
同じ釜の飯を食うとはよく言ったもので、一緒の場所で寝泊まりするうちに最悪だった関係も徐々に修復。なによりも拾ったロボットがこれまた強い。「アトム」と名付けられたそれはスパーリング用の的だけあって耐久力はピカイチ、小さな体を生かしたまるで競走馬のような軽快なステップと回避で巧みに相手を翻弄、本職仕込みの技で次々に相手をノックダウンしていきます
プログラムや戦術研究、そしてなによりも勝利を通して近づいていく親子の距離。味の好みすらわからなかった二人の間柄は、いつの間にか額を突き合わせて試合動画のチェックをするまでに。子供が操縦するとの噂も相まって、勝ち進んだ彼らはついに全土より猛者が集う公式リーグ、WRBからの公式オファーを得ることに。いつのまにかふたり(とロボット)はアメリカ中で名をとどろかす有名人になっていました。ただ悲しいかな、夏休みの終わりは徐々に近づいて来るのです
どんなごっつい巨体でも結局動かすのは人間。ロボットが機敏に動き回る世界観で、あえてアナログなスティックコントローラーを使って遠隔操作するようにしたのは大正解だと思います。人間が動かすからこそ、そこにドラマが生まれる。全自動で頭をもぐロボットに感動は生まれないのです。人馬一体ならぬ人機一体のガチンコバトルはさぞ盛り上がるでしょうね
ガード→頭がクリンッってなるところはかなりお気に入り
悪役
主人公の現役時代からの宿敵であるリッキー、最凶ロボを資金面から支えるファラ(左)など、作品には娯楽映画らしくわかりやすい"ワル"が多数存在しますが、その中でも自分の一番のお気に入りは彼、タク・マシド(右)です
『リングで何が起きようと、すべての戦いの結果は一つ
ゼウスは目にするものを ...殺す』
ゼウスの生みの親にして超天才、荒々しくランボルギーニを乗り回すかたわら、VIPルームで全力でスマホゲーをする一面もある男。ゼウスを自分の"創造物"とし、絶対的な自信をもつ彼との対決が物語後半の主軸になっています。終始ぶれないその高慢な態度と手段を選ばない冷酷さ。ピンチになれば自らコントローラーを握って指揮を取り、自分が誤って間違っていても絶対に謝らない。近年失敗を部下のせいにして責任をなすりつけたり、最後の最後で「おれが間違っていた」などとほざき膝をつく敵役が多い中で、ここまで首尾一貫したすがすがしい”ワル”は珍しいと思います。こんな人材が今の日本社会に必要なんじゃないでしょうか。ちなみに上記画像のインタビューシーン、『殺す』のところ満面の笑みです。むしろ本編中そこくらいしか笑いません。これがまたいい笑顔なんですよね。ぜひご確認ください
最終試合
もちろんクライマックスに待ち受けるのはWRBチャンピオン、つまるところ世界最強のロボットである「ゼウス」との対決です。はっきり言って最終戦、それまでの1時間強は前座といっても過言じゃないくらいアツいです。映画は数多くあれどここまで盛り上がるシーンはまずないです。観る人は誰でも拳を振り上げ一緒に応援すること間違いなし。音量を少し上げましょう
絶対神というよりはツルツルのゴリラのような...
パシフィック・リムのロボコン体型よりはマシですが、マシドはデザインにはこだわらないんでしょうか。小柄なアトムとの体格差がありすぎて益々ゴリラっぽい ちゃんと階級分けしないと試合として成立しないような気がするんですが大丈夫か
事実最終戦はノーカットで映されるのではなく、途中ラウンドはかなり省略されてます。これには初視聴時のみならず今でもムッとしますが、試合たれ流しじゃテンポ悪いしエンターテインメント性のためには仕方ないかもしれません。それをもってもありあまる感動と興奮が味わえるので問題ないです。しかしここぞとばかりに流れ出すメインテーマ。最後の闘いは何度見ても鳥肌が立ちますね、血沸き肉躍るとはこのことでしょう。「ぶっ壊せ!」
勝ち、王を玉座から引きずり下ろすのか、それとも負け、ひと夏の夢としてはかなく散るのか
ゴミ捨て場から始まった彼ら親子の挑戦を、ぜひともその目で見届けてほしいです
音楽ストーリー映像その他もろもろ、非のつけようがない、満点を超えた伝説の映画だと思います
どうぞチェックしてみて下さい
ステイマとネタバレひど過ぎでノーマークだった「君の名は。」を観たくなってきました。前評判が良く、小説何周もした人間もいるとのことで、まわりの様子見て行ってくるかもしれません